仮面(元)、1Kの隠れ家

心が暇なので、厨2病だった頃に思いを馳せて、痛々しいものを書きたい

びわの季節

のっけから季節外れな題名である。

しかし小学生の頃に、この「びわ」という植物にいくつか思い出があるので、少し触れようと思う。

びわは、大体4月~5月、おそくて6月くらいに実がなる初夏くらいの植物という印象だ。何故か小学校に沢山植えてあり、運動場の奥の木々がおいしげるところや正門手前の中庭にも腐るほど植えてある。

大抵ちっちゃな虫がついてて汚く、この時期は地面にグシャグシャのビワの実が転がっている。



ぼくは小学校中学年くらいから、学校の中庭のビワの木から、まだ熟れきってないビワの実をむしり取り、学校の隣に併設された幼稚園の運動場に投げ込むという遊びをしていた。

ビワの季節になる度に、放課後毎日ビワをちぎっては幼稚園に投げ込む、次の日も投げ込む、また次の日も、といったふうな生活をしていた。

隣に併設されているとはいえ、坂道沿いに建っている幼稚園は、小学校の校門の前の地面より2mほど地面から高く基礎作りされた所に建てられており、さらに塀も高く、道路も挟んでいるので、小学生がビワの実を投げ入れるには少し厳しい条件であった。

しかし、僕は少年野球をやっていたこともあり、肩には自信があったので、ブンブン腕を振り回してビワの実を幼稚園に投げ入れて遊んでいた。



小学校6年生になった時、友達が階段の手すりの上の部分に寝そべって(しがみついて?)じっとしていた。
蝉のようにしがみついた僕の友達に、担任の先生は「何してんの?」と素朴な疑問を投げていた。
すると友達は「青春してんねん」と返していた。

ふと、僕はここで青春とはなんだろうと思った。
現在22の僕にとって青春とはとうに逃して過ぎ去ってしまったものであるが、当時の僕にとって、青春というワードはまだ見ぬ世界を想像する冒険前の少年のような気分にさせてくれた。

彼はいつも階段の手すりの上にしがみついていた。学年が変わっても、教室の前に階段がなくても階段を探してしがみついていた。
彼は小学校生活で突き通した自分の行いを青春だと信じて、最後まで突き通そうとしている。

そこで僕は、彼にとっての階段の手すりが僕にとってのビワと同じだということに気がついた。


そうか、これが青春なのか。


そう思って僕は、小学校生活最後のビワの季節に最後のビワの実を幼稚園に向かって放り投げたのだ。